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Ⅱ-②死亡事故の場合~刑事裁判の解説編~

  • (1)突如として刑事事件の当事者となる交通事故遺族-衝撃と不安な感情
    • ア 知らない世界の人々とのやりとりが始まること
    • イ 悲しみを堪えながらポイントを知っておく
  • (2)警察・検察庁とのやりとり-ポイントは加害者への処罰感情、示談の有無
    • ア 捜査機関から主として何を聞かれるのか-被害者の生活状況、処罰感情
    • イ ポイントは「処罰感情」と「加害車両の運転手との示談の有無、見込み」
  • (3)被害者等通知制度-検察審査会への審査申し立て
    • ア 被害者等通知制度、被害者ホットライン
    • イ 被害者側による検察審査会への審査申し立て
    • ウ どのような場合に検察審査会への審査申し立てを検討すべきか
  • (4)被害者参加制度~意見の陳述~
    • ア 被害者(遺族)の意見内容を加害者の量刑を決める要素とすること
    • イ 雑感-ご遺族の自然な感情と刑の相場とのズレ
  • (5)雑感-被害者参加制度について
  • (6)刑事裁判手続の解説~被害者参加制度~(刑事訴訟法第316条の33~)
    • ア 被害者が刑事裁判に参加可能となる犯罪の範囲(刑事訴訟法316条の33)
    • イ 参加可能な人
    • ウ 参加した被害者が刑事裁判で出来ること
    • エ 刑事裁判へ参加することに対する不安について

死亡事故の場合~刑事裁判の解説

(1)突如として刑事事件の当事者となる交通事故遺族-衝撃と不安な感情


ア 知らない世界の人々とのやりとりが始まること

 ご家族が交通事故で亡くなったとの連絡を受けたご遺族は、「身近な人が不慮の死を遂げる」という衝撃的な事実を突きつけられた後、保険会社の担当者との民事的なやりとりに巻き込まれると同時に、交通捜査担当刑事や検察庁の検察官といった普通に暮らしていた時には会ったこともなかった刑事的な分野の人々とのやりとりを余儀なくされます。

イ 悲しみを堪えながらポイントを知っておく

 多くの遺族は、ショックを受けたままの状態で、必要な時には捜査機関の捜査に応じたり、後日、裁判の席で証言するなどの協力をしていく立場にたたされていきます。
 刑事さん、検事さんといった日頃付き合いのない人とのやりとりが始まるのですから、何らかの不安を覚えるのが自然だと思うのですが、時には湧き上がる悲しみや不安を抑えて、理性的に対応していかなければならない場面と直面するはずです。
 以下では、被害者遺族が直面する場面ごとにポイントを説明させて頂きます。

(2)警察・検察庁とのやりとり-ポイントは加害者への処罰感情、示談の有無


ア 捜査機関から主として何を聞かれるのか-被害者の生活状況、処罰感情

 被害者遺族は、警察署の刑事、検察庁の検事などからの事情聴取に際して、亡くなった方の生活状況など、被害者についての情報提供や、加害者に対する遺族の処罰感情についてお話することになります。
 これにより、捜査機関は、「当該交通事故の結果として、平穏に生活していた方の人生が奪われてしまい、遺族の加害者に対する処罰感情は峻烈極まりない事件である」等と加害者の量刑に関係する事件の概要・結果を把握していくのです。

イ ポイントは「処罰感情」と「加害車両の運転手との示談の有無、見込み」

 被害者側が捜査機関に提供する情報としてポイントとなる点は、「処罰感情」「加害車両の運転手との示談の有無、見込み」です。
 捜査というと、事故状況や犯人(加害者)の情報収集といったイメージが強いかと思いますが、それだけではありません。
 捜査は、「加害者に適切な刑事罰を科してくれと裁判所に起訴(公訴)するため、犯人及び証拠を収集する手続き」であるため、被害者側の、加害者に対する処罰感情や、示談の有無といった事実に関する調査も行うこととなるのです。

(3)被害者等通知制度-検察審査会への審査申し立て


ア 被害者等通知制度、被害者ホットライン

 捜査が終了した後、検察官は、裁判所に対して「①加害者に有罪判決を求めて起訴する」か、それとも、「②起訴を起こさない不起訴処分にする」かを判断します。
 被害者の親族、もしくはこれに準ずる人は、加害者の処分結果等について検察庁に情報提供を求めることが出来ます。被害者等通知制度という法律上の制度があるのですが、被害者支援を充実化させるため、全国の検察庁では「被害者ホットライン」という専用電話窓口を設けています。

イ 被害者側による検察審査会への審査申し立て

 遺族が検察官の処分に不服があるときには、遺族は検察審査会という組織に対し、検察官の下した不起訴処分が妥当か否か審査を求める方法として「検察審査会への審査申し立て」という制度があります。

ウ どのような場合に検察審査会への審査申し立てを検討すべきか

例えば、検察庁の不起訴処分の理由として、①亡くなった被害者の過失が大きい、②加害者にとって犯罪の認識(故意)がなかった(人を轢いたという認識がなく木の枝だと認識していた)といった理由にどうしても納得できない場合に申立てを検討すべき制度です。
 刑事裁判で有罪判決を獲得するためには、「合理的疑いを差し挟む余地がない程度の立証」が必要とされています。
 検察庁が、加害者に犯罪の故意があったか否かといった「内心」について「疑いを差し挟む余地がないことを立証しきれない」と判断して不起訴処分となった場合、一般の方が覆すのはなかなか困難だというのが実感です。目撃者が顕れるなど新証拠の発見でもあれば良いのですが・・・。

(4)被害者参加制度~意見の陳述~


ア 被害者(遺族)の意見内容を加害者の量刑を決める要素とすること

 捜査が終了した後、加害者に対する刑事裁判が始まると、犯罪の被害者(遺族)側が裁判に参加して自ら発言し、被害者の声を裁判官(裁判員裁判であれば裁判員も含まれます。)に直接伝える制度が設けられています。
 被害者参加制度と呼ばれるこの制度が設けられるまでは、犯罪被害者側は刑事裁判では蚊帳の外という扱いだったのです。
 被害者側から「加害者に対する厳罰を求める。」という感情が伝えられた場合、裁判所は加害者の刑の重さを決める際に被害者側の意見をなるべく考慮することとなっています。
 例えば、被害者の処罰感情が強い場合、被害者が加害者との示談に応じて(許して)いる場合よりは刑を重くするという運用がなされています。

イ 雑感-ご遺族の自然な感情と刑の相場とのズレ

 実務の経験としては、被害者側参加制度は、平成20年12月1日から導入されたまだまだ新しい制度であって、「制度の導入によって、加害者の量刑に劇的な影響を与える様な変化があったわけではない。」というのが感想です。
 家族を亡くしたご遺族の「自然な感情」と、現行法制上の「刑の相場」とのズレは次の言葉に集約されると思います。
「人が一人亡くなっているのに、加害者は「執行猶予」付き判決なんですか!?」
 個人的には、もう少し厳しい刑罰の運用をしても良いのではないかな、と思っています。

(5)雑感-被害者参加制度について


「どうせ執行猶予付き判決」だからといって「遺族の刑事裁判への参加は意味がないのか?」という問題の答えは、私はNoだと思います。
 刑事裁判は、被害者個人の感情は刑の選択に考慮しますが、本質的に、「民衆の感情や世論の影響を受けずに、理性的に犯罪事実の認定や今ある法律の範囲内で刑の選択がなされること」がシステムの前提としてとして組み込まれています。
 しかし、司法と関係がない方の生活から、大幅にかけ離れた世界で、「司法が何をやっているのかさっぱりわからない」というシステムは適切でないという考えから、裁判員制度の導入や、被害者側の刑事裁判への参加制度が生み出されました。
 交通事故事案とは異なりますが、某新興宗教裁判の報道で被害者遺族の方達が「裁判を一部始終見届けられ、質問も出来た。満足している。」とのコメントを残されているのを読むと、「いつ裁判が行われたのか、どういう根拠で加害者の刑が決められたのかを、遺族が知らないところで進んでいた」というかつての運用より、全体がある程度クリアに見える被害者参加制度は、制定された価値があった制度だと思います。
 被害者側の参加が進み、司法の在り方について議論が深まり、「交通事犯の加害者の処分がまだまだ甘すぎるのではないか。」といった問題提起の声が強くなれば、刑事に関する法律の内容そのものが改正されていくこともあり得るのです。

(6)刑事裁判手続の解説~被害者参加制度~(刑事訴訟法第316条の33~)

 平成20年12月1日から導入された制度です。
 この制度導入前の刑事裁判は、裁判官、検察官、被告人、弁護人によって行われ、犯罪の被害者は刑事裁判からは置き去りにされていました。
 つまり、犯罪の被害にあって、その後の人生を大きく狂わされた被害者本人やその遺族が、積極的に刑事裁判に参加する手段がなかったのです。
 このような状況を反省し、犯罪の被害者が直接裁判に参加して自ら発言し、被害者の声を裁判官(裁判員裁判であれば裁判員も含まれます。)に直接伝えていくために、この制度は作られました。
 参加の対象となる犯罪、参加できる人、参加した裁判にてできることは次の通りです。

ア 被害者が刑事裁判に参加可能となる犯罪の範囲(刑事訴訟法316条の33)

・殺人、傷害、危険運転致死傷罪など故意の犯罪行為によって人を死傷させた罪

・強制わいせつ、強姦などの性犯罪

自動車運転過失致死傷罪、業務上過失致死傷罪

・逮捕監禁、略取誘拐、人身売買の罪

イ 参加可能な人

上記犯罪を含む罪について①直接被害を受けた被害者や②その法定代理人、③又は被害者が死亡した場合や心身に重大な故障がある場合には、被害者の配偶者、祖父母・父母・子などの直系親族・兄弟姉妹(刑事訴訟法第290条の2)が参加可能となります。
 交通事故の被害に遭われた方やその遺族も、危険運転致死傷罪又は自動車運転過失致死傷罪の被害者に該当しますから、加害者の刑事裁判に参加可能です。

ウ 参加した被害者が刑事裁判で出来ること

・裁判に出席し、法廷の中で検察官の隣(若しくはその近く)に座ること。

・事件について、検察官に対して要望を伝えたり、検察官からの説明を受けること。

・証人に対して尋問すること。
 ただし、質問できるのは「情状(※反省度合いなど、犯罪事実に関するものは除かれます)」に関する事項に限られ、証人の証言の信用性を争う尋問内容のみとされています。

・被告人に対して犯罪事実や情状事実などについて、質問すること。

・犯罪事実や法律の適用(具体的には求刑など)に関して「なるべく罪を重くして償って欲しい。」などと意見を述べること。
 ※実際には、量刑にはある程度の相場があって、まだまだ被害者の苦しみは実際の刑の重さに反映されていない、というのが偽らざる感想です。

エ 刑事裁判へ参加することに対する不安について

 被告人としてではなく、重大事故の被害者側の者として参加するにしても、多く一般市民にとっては刑事裁判に参加することには不安を覚えるものでしょう。

 基本的には担当検察官の指導に従って証言台の前に立ち、思う通りに裁判官に心情を伝えれば良いのですが、事前に証言する事柄のチェックや、リハーサルを実施することで、心理的不安は軽くなるはずです。

 事務所代表弁護士は、被害者参加制度が現行の通りに制度化される以前から被害者側の意見陳述のため刑事裁判参加へのフォローをしていた経験を有しています。それだけ年齢を重ねたということですね。

 現在では、被害者やその遺族本人が刑事裁判に参加するのではなく、弁護士を代わりに参加させる被害者参加弁護士制度という制度があります。

 死亡事故事案の裁判は、得てして、遺族にとっては、亡くなった方の為に全力で戦うというお気持ちで裁判に参加されることが多く、心が痛むシーンが目立ちます。

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