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  • Ⅳ-⑥ 口の障害
  • 1 口の障害はどのように分類されるか
    • (1)分類-①そしゃく機能障害、②言語機能障害、③歯牙障害
    • (2)準用-④味覚障害、舌の異常、嚥下障害、著しいかすれ声、開口障害
  • 2 そしゃく機能障害についての解説
    • (1)そしゃく機能障害-咬み砕きの障害
    • (2)認定の仕方-ポイント
    • (3)解説-そしゃく及び言語機能障害の認定基準について
    • (4)そしゃく機能障害-認定基準
      • ア 1級2号、3級2号-「そしゃく機能を廃したもの」
      • イ 4級2号、6級2号-「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
      • ウ 9級6号、10級3号-「そしゃく機能に障害を残すもの」
      • エ 12級相当-開口障害等を原因として,そしゃくに相当時間を要するもの
      • オ 舌の異常・嚥下機能障害
  • 3 言語機能障害についての解説
    • (1)言語機能障害-発音の障害、後遺障害の序列付け
      • ア 言語機能障害とはどの様な障害か
      • イ 前提知識-子音の4分類
    • (2)言語機能障害-認定基準
      • ア 1級2号、3級2号-「言語の機能を廃したもの」
      • イ 4級2号、6級2号-「言語の機能に著しい障害を残すもの」
      • ウ 9級6号、10級3号-「言語の機能に障害を残すもの」
      • エ かすれ声
  • 4 歯牙障害
    • (1)歯牙障害とはどの様な障害か
      • ア 歯牙障害の基本的な考え方-歯を現実に何本喪失したか
      • イ 歯牙障害についての認定基準
      • ウ 認定基準である「歯科補てつを加えた」といえるには、どの様な場合か
      • エ 喪失した歯の数と義歯の数が異なる場合
      • オ 認定の対象とならない歯はあるか
    • (2)加重障害
    • (3)歯牙障害に関する問題点
    • (4)後遺障害診断書用紙について
    • (5)昨今の傾向
  • 5 味覚障害、舌の異常-12級相当として(準用)後遺障害等級認定されうる
    • (1)味覚障害の認定基準、認定基準の簡単な説明
    • (2)味覚脱失
    • (3)味覚減退
    • (4)障害認定の時期
    • (5)味覚障害について裁判所の傾向
  • ■ 雑談

1 口の障害はどのように分類されているか

(1)分類-①そしゃく機能障害、②言語機能障害、③歯牙障害

 口の障害は、大きく分類すると、

①そしゃく機能障害

②言語機能障害

③歯牙障害

に分類されています。

 例えば、車両との衝突後に顔面部を地面に叩きつけられてしまい、歯を折ったり、顎を骨折した結果、そしゃく・言語機能に障害が残ってしまったりすることがあるのです。

(2)準用-④味覚障害、舌の異常、嚥下障害、著しいかすれ声、開口障害

ⅰ 舌の異常

ⅱ 味覚の障害

ⅲ 咽喉支配神経の麻痺等による嚥下障害

ⅳ 声帯麻痺による著しいかすれ声

ⅴ 開口障害を原因としてそしゃくに相当時間を要する場合も、
残存する障害の程度に応じて、口に関する後遺障害を準用することで、相当な等級が認定される場合があります。

2 そしゃく機能の障害についての解説

(1)そしゃく機能障害-咬み砕きの障害


そしゃく機能障害とは、簡単に言うと、食べ物を咬み・砕く機能の障害です。ヒトは、食べ物を歯で噛み、砕くことによって消化・吸収をしやすくしているのですが、顎骨の骨折や歯の損傷により、咬み砕きが出来なくなってしまうものを後遺障害として評価しているのです。


(2)認定の仕方-ポイント

 そしゃく機能の障害は、上下咬合、排列状態、下あごの開閉運動等から、総合的に判断していく、と抽象的には解説されています。

 認定に際して、実際のポイントは、

①事故直後のX線等の画像所見として顎骨の骨折が認められるか否か

②MRI、CT等の画像所見として、顎の関節円板の偏位が認められるか否か
(骨折後、かみ合わせに問題があると、特に下顎の関節は容易に左右、後方へ偏位しやすいそうです。顎の軟骨のズレが画像で捉えられているか否か)

③歯間の距離などの客観的な所見(画像所見や後遺障害診断書上の他覚症状、検査結果など)が重視されつつ、あわせて

④そしゃく状況報告表の報告内容が、他覚所見と整合性を有しているか、を踏まえて等級認定がなされます。

「例:プリンは容易に食べられるが、ゆでアスパラガスは何とか食べられ、りんごやゴボウは食べられない。」


(3)そしゃく及び言語機能障害の認定基準

(4)解説-そしゃく及び言語機能障害の認定基準について

ア 1級2号、3級2号-「そしゃく機能を廃したもの」

 「そしゃく機能を廃したもの」とは、流動食以外は摂取できないものを言います。

 1級2号の認定には、「そしゃく機能を廃した」ことに加えて、「言語の機能を廃したもの」でもある必要があります。

 「言語の機能を廃したもの」と言えるには、4種の語音のうち3種以上の発音が不能である と言える必要があります。

 詳細は、後述します。

イ 4級2号、6級2号-「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」

 「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」とは、粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないものを言います。

 4級2号の認定には、「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」に加えて、「言語の機能に著しい障害を残すもの」という要件が加わっています。

 「言語の機能に著しい障害を残すもの」といえるには、4種の語音のうち2種の発音不能又は綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないもの と言える必要があります。

 詳細は、後述します。

ウ 9級6号、10級3号-「そしゃく機能に障害を残すもの」

 「そしゃく機能に障害を残すもの」とは、①固形食物の中にそしゃくができないものがあること。又は、②そしゃくが十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合をいいます。



エ 12級相当-「開口障害等を原因として,そしゃくに相当時間を要するもの」

①開口障害を原因として、②そしゃくに相当時間を要するものは、12級を準用するとの運用がなされています。

※①「開口障害等を原因として」とは、開口障害、不正咬合、そしゃく関与筋群の脆弱化など、そしゃくに相当時間を要することの原因が医学的に確認できることをいいます。

※②「そしゃくに相当時間を要する場合」とは、日常の食事において食物のそしゃくはできるものの、食物によってはそしゃくに相当時間を要することがあることをいいます。

→要するに、開口障害等の原因となる事実を他覚的所見から認定でき、当該事実から判断すれば、そしゃくに相当時間を要することがもっともだ、と合理的に推測できれば、後遺障害12級相当として損害賠償を求めうると評価されているのです。

オ 舌の異常・嚥下機能障害

 舌の異常及び嚥下機能障害については、その障害の程度に応じて、そしゃく機能障害に係る等級に準じて相当等級を定める取扱いとなります。


3 言語機能障害についての解説

(1)言語機能障害-発音の障害、後遺障害の序列付け

ア 言語機能障害とはどの様な障害か

 言語機能障害とは、簡単に言うと、発音機能の障害です。

 医学用語で、発音を操作するために口腔等の形を変化させる動作を構音といい、例えば、「あ」と「お」を連結するように、語音を一定の順序に連結することを綴音といいます。

 言語機能障害は、どの程度の音の操作が不可能になっているかによって、等級が序列付けられています。

イ 前提知識-子音の4分類

子音を構音部位に従って分類すると次の4種に分類され、言語機能の障害は、次の4種の語音の発音にどの程度の障害が残っているかで序列付けられています。

①口唇音(ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ)

<口と唇で音を操作する音>

②歯舌音(な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ)

<前歯の裏に舌をつけて出す音>

③口蓋音(か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)

<口内(口蓋部分)と舌の動きに依存する音>

④咽頭音(は行)

<口の動きに依存せず、喉で音を出すもの>

(2)言語機能障害-認定基準

ア 1級2号、3級2号-言語の機能を廃したもの

 「言語の機能を廃したもの」とは、4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、咽頭音)のうち、 3種以上の発音が不能となったものをいいます。

イ 4級2号、6級2号-言語の機能に著しい障害を残すもの

 「言語の機能に著しい障害を残すもの」とは、4種の語音のうち2種の発音不能のもの又は綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないものをいいます。

ウ 9級6号、10級3号-言語の機能に障害を残すもの

 「言語の機能に障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、 1 種の発音不能のものをいいます。

エ かすれ声

 声帯麻痺による著しいかすれ声については、第12級相当として取り扱われます。

4 歯牙障害

(1)歯牙障害とはどの様な障害か

ア 歯牙障害の基本的な考え方-歯を現実に何本喪失したか

 歯牙障害は、歯の喪失に関する後遺障害であって、歯を現実に何本喪失したかによって10級から14級まで5つの等級に序列が設けられています。

 自賠法施行令別表には、歯牙障害の認定基準として、「歯科補綴ほてつを加えた」歯の本数によって等級に序列がつけられる旨が表現されています。

 この「歯科補綴ほてつを加えた」という認定基準の直接的な文理解釈とは離れますが、必ずしも現実に「歯科補綴」をしている必要はなく、歯の喪失、抜歯、歯冠部の大部分が喪失していることが確認できれば、補綴前であっても等級認定されうると解釈されています。


イ 歯牙障害についての認定基準

 歯科補綴ほてつを加えた歯の本数によって、10級4号、11級4号、12級3号、13級5号、14級2号という序列が設けられています。


ウ 認定基準である「歯科補綴ほてつを加えた」といえるのは、どの様な場合か

 「歯科補綴ほてつを加えた」といえる場合には、

①現実に歯を喪失(抜歯を含む)した場合、

 または

②歯を著しく欠損した(歯肉より露出している部分である歯冠部の体積の4分の3以上を欠損)場合

 および

③歯科技工上、残存歯冠部の一部を切除したために歯冠部の大部分(体積の4分の3以上)を欠損したものと同等な状態になったものに対して補綴ほてつを加えたもの

 をいうと解釈されています。

 合金を用いたインレー、ポストインレーを行うにとどまり、歯の目に見える部分の体積を4分の3以上失っていない場合には補綴ほてつ歯数に含めません。

 歯冠部の欠損が大きいため継続歯(さしば、ポストクラウン)としたものは補綴ほてつ歯数に含めます。

 欠損した歯に代えて架橋義歯(ブリッジ)を使ってダミーを入れた場合、補綴ほてつ歯数に含めます。

 障害認定必携には、「有床義歯又は架橋義歯等を補綴した場合における支台冠又は鈎の装着歯やポスト・インレーを行うにとどまった歯牙は、補綴ほてつ歯数に算入せず」と難しく説明されていますが、歯の喪失の程度に着目して判断されているのです。

エ 喪失した歯の数と義歯の数が異なる場合

 喪失した歯が大きいため、あるいは歯の間に隙間があって、喪失した歯の数と義歯の数が異なる場合があります。

 例えば、喪失した歯が3本であるが、補てつした義歯が4本である場合には、喪失した3歯を補てつしたものとして取り扱われます。


オ 認定の対象とならない歯はあるか

 いわゆる「親不知」は認定対象とはなりません。

 また、乳歯も永久歯ではないため原則として認定対象とはならず、永久歯が生えなくなるという証明が医師によってなされたならば認定対象となります。

(2)加重障害

 既に、後遺障害等級に該当する程度の歯科補綴を加えていて交通事故によって更に歯科補綴を加えたために、上位等級に該当する場合を言います。

 よくあるのは、いわゆる虫歯で歯冠部の大部分を欠損(C4クラス)し、あるいは喪失して、義歯になっていたような場合です。

 例えば、既に3歯の既存障害となる場合に、交通事故で更に2歯の補綴を加えた場合では、5歯(3+2)に補綴を加えたものとして13級5号に該当しますが、既存障害は3歯のため14級2号ですので、13級から14級を控除したものが賠償の対象として認定されます。

(3)歯牙障害に関する問題点

 交通事故により生じた後遺障害に対する損害賠償の費目の中に、「後遺障害逸失利益」というものがあります。


「後遺障害逸失利益」=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間」


 この逸失利益の算定は、上の式によって求められることになります。

 労働能力喪失率は、後遺障害の等級ごとに一定の目安となる割合が定められていますが、歯牙障害は、交通事故により「歯を失った」という後遺障害なので、労働能力の喪失とは何の関係もない、つまり労働能力喪失率は0%なのではないか、という問題があります。


 この点について、裁判所は、歯牙障害が労働能力喪失に直接の影響を与えないとして、労働能力の喪失を認めなかったり、認めたとしても喪失率や喪失期間を制限したりすることが多いようです。

(4)後遺障害診断書用紙について


 歯牙欠損のための歯科用の後遺障害診断書用紙は、通常の用紙とは異なり、専用の用紙がありますのでご注意下さい。


(5)昨今の傾向

 なお、昨今においては、交通事故によって歯牙を喪失した被害者がインプラント治療を受けた場合、加害者側(保険会社)からその治療費が支払われるケースも増えてきているため、症例によっては、支台歯が補綴歯数にカウントされないブリッジより、機能的・審美的な回復に優れているインプラント治療を選択した方が被害者(患者)にとって有利になることもあると考えられます。

 もし交通事故によって歯牙を失った患者さんが、経済的理由からインプラント治療を躊躇っている場合には、上記の点を指摘し、加害者側(保険会社)との交渉をする価値はあると思っています。

5 味覚障害、舌の異常-12級相当として(準用)後遺障害等級認定されうる

(1)味覚障害の認定基準、認定基準の簡単な説明

 味覚の障害については、別表1に直接規定があるわけではないのですが、味覚喪失、味覚減退について、口の障害に準ずるものとして12級相当、14級相当として後遺障害等級認定がなされることがあります。

別表1

(2)味覚脱失


 頭部外傷その他顎周囲組織の損傷及び舌の損傷によって生じた味覚脱失については、後遺障害12級相当として扱われることがあります。

 甘み、塩味、酸味、苦みの基本4味質の全てが認知できない状態に到ったものを味覚脱失として12級相当と評価するのです。

(3)味覚減退

 頭部外傷その他顎周囲組織の損傷及び舌の損傷によって生じた味覚減退については、後遺障害14級相当として扱われます。

 甘み、塩味、酸味、苦みの基本4味覚のうち1味質~3味質が認知できない状態に到ったものを味覚減退として14級相当と評価するのです。

(4)障害認定の時期

 味覚障害については、その症状が時日の経過により漸次回復する場合が多いので、原則として療養を終了してから6か月を経過したのちに判断します。

(5)味覚障害の裁判例

 味覚障害における裁判例では、労働能力に直接影響を与えるものではないとして、労働能力損失率を制限するものがあります。

 裁判所にも受け容れやすい主張、考え方として、逸失利益は他の部位の障害に比して制限されてしまうとしても、慰謝料の補充的性格に鑑みて、慰謝料の増額を検討すべき事案であると主張をするべきだと思います。

■ 雑談

 昔、酔っぱらいにこめかみ付近を殴られた際、約1か月間、痛みで口を開けられなくなり、固形物を食べられなくなったことがあります。毎日、毎日、憤慨しながら、お粥をすすって過ごしました。

 お粥の具材として、梅干し、昆布、かつお節、卵から始まり、韓国海苔、ごま油、チャーシュー、あんこ、チョコバナナと続き・・・吟醸酒で煮込んだり、大吟醸で煮込んだり・・・色々やって病状をムリヤリ楽しむこととしているうちに、打撲傷がひいて口が開くようになりました。

 美味しくご飯を食べられることの有難さが本当に身に染みた日々でした。

以 上

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