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Ⅳ-⑨ 眼の障害

  • 1 眼の後遺障害とはどの様なものか
    • (1)分類~①眼球の障害、②まぶたの障害との分類
    • (2)眼の生理的機能ごとに細分化
  • 2 ①眼球の障害について認定基準の解説
    • (1)視力障害-失明、視力低下の障害
      • ア 視力障害とは
      • イ 視力障害の認定基準
      • ウ 注意点「視力」「あてはめ」
      • エ 保険会社と争われがちな点
    • (2)調節機能障害 -遠近のピントが合わなくなる障害
      • ア 調節機能障害とは
      • イ 調節機能障害の認定基準
      • ウ 注意点
      • エ 保険会社と争われがちな点
    • (3)運動機能障害-眼球の運動範囲が狭まる障害
      • ア 運動機能障害とは
      • イ 運動機能障害の認定基準
      • ウ 注意点
      • エ 保険会社と争われがちな点
    • (4)視野障害-1点を見つめた場合に同時に見える範囲が狭まる障害
      • ア 視野障害とは
      • イ 視野障害の認定基準
  • 3 ②まぶたの障害について認定基準の解説
    • (1)まぶたの欠損障害の認定基準
    • (2)まぶたの運動障害
  • 4 その他の障害について
    • (1)外傷性散瞳、涙流が眼の障害として扱われていること
    • (2)外傷性散瞳の認定基準
    • (3)涙流の認定基準

1 眼の後遺障害とはどの様なものか

(1)分類~①眼球の障害、②まぶたの障害との分類

 眼の障害は、大きくは、

①眼球の障害

②まぶたの障害

 とに分類されています。


 眼の後遺障害は、頸椎の後遺障害や脳の損傷などに伴って眼にも後遺障害が残存するというのが典型的なパターンだと認識しています。

 衝突や転倒など事故の衝撃によって、頭部や顔面を車両内外で強打することで、眼窩(眼球のおさまるくぼみ)周囲の出っ張った骨を骨折してしまったり、視神経が頭蓋内に通る管(視束管)を骨折して視神経を傷つけてしまったりする事故例が散見されます。

 頭部外傷による視神経の損傷は、必ずしも眼科で対応するとは限らず、脳神経外科、神経内科で対応して頂く場合があるかと思いますが、後遺障害診断書作成にあたっては、後遺障害等級認定に必要な検査を実施してもらえるように注意すべきです。

(2)眼の生理的機能ごとに細分化

 そして、①眼球②まぶたの障害は、生理的機能ごとに、次の様に細分化され、障害の程度に応じて等級に序列が付けられています。

①眼球の障害→ⅰ視力障害、ⅱ調節機能障害、ⅲ運動機能障害、ⅳ視野障害

②まぶたの障害→ⅰ欠損障害、ⅱ運動障害

2 ①眼球の障害について認定基準の解説

(1)視力障害-失明、視力低下の障害

  • ア 視力障害とは
    •  眼の視力障害とは、視力の全部または一部を失うことです。視力を失った程度に応じて後遺障害の等級に序列が設けられています。
    •  事故に遭うと大なり小なり視力の異常を伴うことが多いのですが、次に示す認定基準に達しないものは、保険実務・賠償実務上、独立の後遺障害としては扱ってもらえないという点が、実務と一般の方の感覚とズレている点だと思います。悔しいなと思うところです。


  • イ 視力障害の認定基準
  • ウ 注意点
    • ⅰ 後遺障害の認定基準上の「視力」
      •  後遺障害の認定基準上の視力とは、「矯正視力」のことをいいます。
      • 矯正視力とは、眼鏡やコンタクトレンズ、眼内レンズの矯正によって得られた視力のことをいい、裸眼での視力ではありません。
      •  ただし、矯正が不可能な場合、裸眼視力によって等級認定がなされます。
      • コンタクトによる矯正が可能か否かは、医師の管理下で、3か月間、1日8時間以上の連続装用が可能か否かを試行的に装用して判断します。
    • ⅱ あてはめ~例えば両目に視力障害。9級1号か8級1号か?
      • 例えば、両目に障害を負い、1眼の視力が0.5、他眼の視力が0.02となった場合、両眼の視力障害としては9級1号に該当しますが、1眼の視力障害としては8級1号に該当するので、上位の等級である「8級1号」として認定されます。


  • エ 保険会社と争われがちな点-労働能力喪失率、労働能力喪失期間
    •  視力障害の後遺障害が残存した場合、ⅰ労働能力喪失率、ⅱ労働能力喪失期間について争われることが多いです。「視力が下がったとしても、それ程、仕事への支障はないだろう。」と主張してくるのです。
    •  裁判例としては、後遺障害と仕事の制限の程度を個別具体的に判断していくべきものというのが原則的な考え方ではあるものの、認定された等級に対応する労働能力の喪失を67歳まで認めてくれている事例が多いかな、という印象です。

(2)調節機能障害-遠近のピントが合わなくなる障害

  • ア 調節機能障害とは
    •  ヒトが物を見る際、目の水晶体という部分が拡大・縮小し、遠近のピントを合わせることで見る対象を正確に捉えることが出来ているのです。
    •  調節機能とは、このピントを合わせる機能のことをいい、調節機能障害とは、眼が遠近のピントを合わせる機能に障害があることを指します。
    •  調節力の検査は、眼科さんで、アコモドポリレコーダーという装置を用いて検査して頂く必要があります。
  • イ 調節機能障害の認定基準

  • ウ 注意点
    • ⅰ 調節力を測る単位、調節力についての考え方
      •  調節力は、「D:Dioptorie(ジオプトリ)」という単位で表され、数値が大きいほど、調整力も優れていることとなります。
      •  調整力は、加齢とともに減退するものと考えられているので、いわゆる老眼が始まってくる年代である55歳以上の場合、後遺障害の対象として保護を受けられない場合があります(ⅱ-ⅱのb参照)。

    • ⅱ 11級1号における、調節力が2分の1に減じているか否かの判断方法
      • ⅱ-ⅰ 原則的な考え方をする場合:

①障害の発生した眼が1眼のみで、障害の発生した眼の調節力に異常がない場合

→他眼(障害を負っていない目)の調節力と比較して、2分の1に減じているか否かを判断する。

② a 両眼に障害が発生している場合 または

b 障害の発生した眼が1眼のみであるが、障害の発生していない眼の調節力に異常(調節力が1.5D以下)が認められる場合 には

→下記【表:5歳毎年齢の調節力】の「年齢」に対応する「調節力値」と比較して2分の1に減じているか否かを判断する。


【表:5歳毎年齢の調節力】


  •  ⅱ-ⅱ 例外的な考え方をする場合:
    • ただし、以下の場合、後遺障害の対象とはならず補償を受けることは出来ない。
a 1眼に障害が発生した場合で、障害の発生していない眼の調節力が1.5D以下である場合、(実質的な調節機能は既に失われているので)
b 両眼に後遺障害が発生した場合 及び
障害が発生した眼は1眼のみであるが、障害の発生していない眼の調節力に異常が認められる場合で、55歳以上の場合(もともと老眼により調節力に異常が生じていると考えられる)には、
→後遺障害の対象とはなりません(既に実質的な調節機能は失われていたと考えられるので)。
  • エ 保険会社と争われがちな点-因果関係、労働能力喪失率、喪失期間
事故と当該障害との因果関係が争われる場合
調節力に異常が発生しても、眼鏡等の使用により不都合を回避することが可能であることから、労働能力損失率が自賠責基準どおりに認められない場合
調節力は年齢と共に衰えることから、労働能力損失期間が争われる場合が散見されます。

(3)運動障害-眼球の運動範囲が狭まる障害

  • ア 運動機能障害とは
    •  運動機能障害とは、眼球を運動させている6つの筋肉と筋肉を支配している(動眼神経などの)神経麻痺により眼球を運動させる機能に障害が生じてしまうものです。

後遺障害として、

頭部を固定させつつ眼球を運動させることで直視できる範囲(注視野)が狭まる
眼球の向きが同じ方向に動かず、物が二重に見えてしまう(福視)等の障害がある

場合をいいます。

イ 運動機能障害の認定基準


  • ウ 注意点
    • ⅰ ヘススクリーンテスト(10級、13級)
      •  ヘススクリーンテストとは、ヘスチャートというマス目が描かれたボードを用いて、左眼に赤い眼鏡をかけ、右眼に緑の眼鏡をかけたときの片眼の赤像、他眼の緑像から両眼の位置ずれを評価する検査で、患側の眼の動きが水平方向又は垂直方向のどの様に制限されているのかを検査するのです。
      •  ヘススクリーンテストを実施するための検査装置を設置してある眼科さんは一般には多くはありません。検査装置の有無を眼科医に確認しておくべきです。

    • ⅱ 注視野(11級、12級)とは
      •  注視野とは、頭部を固定し、眼球を運動させて直視できる範囲をいいます。
      • 注視野の広さは、相当の個人差がありますが、平均として、単眼視では各方面約50度、両眼視では各方面約45度となっています。検査方法としてはヘスコオルジメーターを用いて測定します。

  • エ 保険会社と争われがちな点-労働能力喪失率、喪失期間
    • ①就労可能年数まで等級どおりの労働能力喪失率が認定されるか否か
    • ②生活上の不都合が生じないとして労働能力喪失率が制限、否定される場合
    • ③具体的な症状や職種を考慮すると、認定された等級よりも高い労働能力喪失率を認定されるべきか否か

 本来、具体的な症状や、職種などにより判断されるべき喪失率や喪失期間を保険会社は低く主張するのです。

(4)視野障害-1点を見つめた場合に同時に見える範囲が狭まる障害

  • ア 視野障害とは
    •  視野とは、眼前の1点を見つめていて(つまり、視線をどこか1点に固定して)、同時に見える外界の広さをいい、その測定はゴールドマン視野計という検査装置で測定します。
    •  視野障害は、視神経(視覚伝達路)に損傷を受けることで生じた、見える範囲の異常を後遺障害として認定しているもので、見える広さの異常の出方によって「半盲症」「視野狭窄」「視野変状」に分類されています。

  • イ 視野障害の認定基準
    • ⅰ 認定基準
      • 視野障害の認定基準は、抽象的には下記の様に定められています。

 なお、認定基準をより正確に理解するには、【日本人の視野の平均値(V/4視標)】についてだいたいの中身を理解したうえで、「半盲症」「視野狭窄」「視野変状」という概念を理解する必要があるので、下記に解説を試みます。


    • ⅱ 「半盲症」「視野狭窄」「視野変状」をどの様に判断するのか。
      •  視野の広さの測定は、を用いて(検査を受ける者が機械の中の1点を見つめているところに、周辺から中心に向かって光をあてていき、光がみえたところでブザーを押すという作業を、「上、上外、外、外下、下、下内、内、内上」と8方向で実施していくことにより、視野の全体像を調べる検査方法で)測定されます。
      •  日本人の(8方向に対する)視野の平均値は下記【表:日本人の視野の平均値(V/4視標)】記載の通りです。

【表:日本人の視野の平均値(V/4視標)】


 上記【表:日本人の視野の平均値(V/4視標)】の合計値は560°になるのですが(=60+75+95+80+70+60+60+60)、この値を正常値と据えたうえ、被検査者の測定結果が、どの様に異常が生じているかで、「半盲症」「視野狭窄」「視野変状」に該当するか否かを判断していくのです。


    • ⅲ 基準~V/4視標角度合計値の60%以下=336°以下)を認定対象とする
      •  「半盲症」「視野狭窄」「視野変状」として後遺障害等級認定の対象となるのは、V/4視標による8方向の視野の角度の合計が、正常視野の角度の合計値である560°の60%以下=336°以下に狭まっている場合です。
      •  日本人の(8方向に対する)視野の平均値は下記【表:日本人の視野の平均値(V/4視標)】記載の通りです。
a 半盲症
 半盲症とは、注視している点を境界としてみた場合、両眼の視野のうち、境界の右半部または左半部の視野が欠損するものをいいます。
 半盲症は、視神経線維が、視神経交叉またはそれより後方において侵されるときに生じるものです。両眼同側の欠損するものは同側半盲といい、両眼の反対側の欠損するものは異名半盲といいます。
同側半盲 異名半盲
b 視野狭窄
 視野狭窄とは、視野周辺の狭窄で、同心性狭窄と不規則狭窄があります。
 b-ⅰ 高度の同心性狭窄は、たとえ視力が良好であっても、周囲の状況を伺い知ることが出来ないため歩行その他の諸動作が困難となります。
 b-ⅱ 不規則狭窄は、狭窄が上方に起こるものや内方に起こるもの等があります。
c 視野変状
 本来、視野変状には半盲症、視野狭窄、暗点、視野欠損を含めた概念なのですが、半盲症と視野狭窄については障害等級表で独立に明示されていますので、障害等級表の中の「視野変状」は、暗点と視野欠損のことをいいます。
 c-1 暗点とは、視野内に生ずる見えない部分をいい、生理的視野欠損(盲点)以外の病的欠損を生じたものをいい、中心性漿液性脈略網膜炎、網膜の出血、脈絡網膜炎等を発症しているときにみられる。
 c-2 視野欠損とは、網膜に感受不受部があれば、それに相当して視野上に生じる不規則な欠損をいい、生理的に存する視野欠損の主なものはマリオネット盲斑(盲点)であり、病的な視野欠損は、網膜の出血、網膜動脈の閉塞等にみられます。

3 まぶたの障害について

 まぶたの障害には、(1)欠損障害と(2)運動障害があり、それぞれ障害の程度に応じて(両眼か1眼か、欠損や)等級に序列が設けられています。

(1)まぶたの欠損障害の認定基準

(2)まぶたの運動障害

 まぶたの運動障害の後遺障害について認定基準は以下表の通りです。


4 その他の障害について

(1)外傷性散瞳、涙流が眼の障害として扱われていること

  • ア 準用について~一般論~
    •  後遺障害等級表には直接的に記載されていない障害であっても、その障害の程度に応じて、等級表に記載されているものと同程度の障害が残存していると評価できるものについては、その障害の程度に応じて、等級表を準用することで後遺障害として扱うことがあります(自賠法施行規則に準用規定が儲けられています。)

  • イ 外傷性散瞳、涙流に後遺障害の等級表が準用されていること
    • ⅰ 認定基準
      •  眼には、眼で受ける光の量を無意識に調節しようとして、光を受けると瞳孔が収縮するという対光反射反応をするという機能があります。
      •  動眼神経という瞳孔を収縮させる瞳孔括約筋を支配する神経に損傷を受けると、この対光反射反応が消失、減弱してしまう(散瞳)のですが、外傷性の散瞳については、等級表に直接記載されている障害に準じて扱うとされています。
      •  また、涙小管が損傷してしまい、涙があふれ出てしまう涙流についても後遺障害等級が準用されています。

(2)外傷性散瞳(11級相当、12級相当、14級相当)の認定基準

ア 認定基準


イ 補足説明

 散瞳とは、瞳孔の直径が開大して対光反応が消失又は減弱するものをいい、「羞明」とは、まぶしいことをいいます。

 外傷性散瞳と視力障害又は調節機能障害が存する場合は、併合の方法を用いて相当等級を定めます。

(3)流涙の認定基準

 外傷により涙小管が断裂、狭窄、閉塞等して損傷した結果、涙が眼から流れてしまうものについても、等級表記載の後遺障害に準じて後遺障害として評価されます。認定基準は下記の通りです。


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