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  • Ⅳ 後遺障害等級認定-②-ⅱ(精神の疾患)
  • 1 精神の疾患(精神障害)を理由とする後遺障害等級認定について
    • (1)精神の疾患を理由とする後遺障害-大分類
    • (2)医師による診断名-往々にして被害の実態がよくわからない診断名
  • 2 非器質性精神障害、後遺障害等級、実際の判断基準
    • (1)【認定されうる後遺障害等級について】
    • (2)自賠法施行令-別表1上の記載(非器質性精神障害に付されうる等級)
    • (3)認定のポイント
  • 3 事故と症状発症との因果関係の判断
    • (1)因果関係判断のポイント
    • (2)保険会社のよくある主張
  • 4 障害の程度の判断 ~抽象的には下記の通り~
    • (1)最低条件
    • (2)自賠責が準拠している労災保険の認定基準=障害の程度についての判断は、具体的には【能力喪失】,【助言・援助の必要性の程度】判断問題であること
    • (3)より具体的には、【能力喪失】【助言・援助の必要性の程度】の判断に際して、何を検討要素として、どの様に判断がなされるのか
    • (4)非器質性精神障害の認定に用いられる書式について
  • ① 様式3号、非器質性精神障害の後遺障害の状態に関する意見書 について
  • ② 日常生活状況報告書 について
  • 5 過去の経験事例、おおまかなイメージ
  • 6 裁判例の傾向
  • 7 弁護士への相談に際して

1 精神の疾患(精神障害)を理由とする後遺障害等級認定について

(1)精神の疾患を理由とする後遺障害-大分類

 精神疾患を理由とする後遺障害等級認定は、大きく分類すると、疾患の原因として以下の①、②に分類されます。

①脳の器質的損傷

脳の損傷が原因であることが、MRI、CTなどの画像所見上、明らかな場合。

②非器質性精神障害

脳の器質的損傷は、画像所見上明らかではないが(①にはあてはまらないが)、精神障害特有の症状を発している場合。脳の器質的損傷を伴わない精神障害。 (本当は、何らかの脳細胞レベルでの損傷はあるのでしょうが、画像所見上はっきりしないため脳の器質的損傷に起因する精神障害と断定できないという程度の意味で捉えた方が非器質性精神障害を理解するのには適切だと思います。)

(2)医師による診断名-往々にして被害の実態がよくわからない診断名

 医師による診断名としては、外傷後ストレス障害、脳震盪後遺症候群、PTSD、心的外傷後ストレス、パニック障害などという被害の実態がよくわからない様な名称が付されることが多いです。

2 非器質性精神障害、後遺障害等級、実際の判断基準

(1)【認定されうる後遺障害等級について】

①脳の器質的損傷が原因と明らかな場合 → 3級、5級、7級、9級 

②非器質性精神障害事案 → 9級、12級、14級、(非該当もあり得る)

(2)自賠法施行令-別表1上の記載(非器質性精神障害に付されうる等級)

 実際にどの様な行動をとるのが適切かを考えるうえでは、非器質性精神障害事案の後遺障害等級認定実務における、実際の判断基準を理解しておくことが有益です。

 判断基準として、自賠法施行令別表1には次のとおり記載されています。

(3)認定のポイント

 非器質性精神障害は、自賠責保険の実務上、

①因果関係の問題:精神症状が交通事故を契機に現れたのかどうか

②障害の程度問題:残っている障害の程度はどのようなものか

 という判断が審査対象となります。

3 事故と症状発症との因果関係の判断

(1)因果関係判断のポイント

 因果関係の問題は、①事故状況、②受傷内容、③精神症状の出現時期、④精神科等の専門医への受診状況が主なポイントとなります。

 →遅くとも事故受傷後10日以内程度で(出来れば事故直後より)精神症状が出現していることが診断書の記載上明らかになっていることが望ましいです。

 例えば、ⅰ事故直後には精神症状が出現していないが、ⅱ事故後に失職してしまった場合、失職した後には精神症状が出現しているという記載になっている場合、精神症状は当該事故によるものではなく、失職によるものとして因果関係を争われると思います。

(2)保険会社のよくある主張

 保険会社は、「非器質性精神障害は、半年~1年程度の時間の経過により治るもの。その後の症状は本人の気のせいなり、事故とは無関係の症状だ。」等という主張をすることが多いように感じます。

 被害者としては、保険会社の言い分をとても素直には飲みこめないのではないでしょうか。

4 障害の程度の判断 ~抽象的には下記の通り~

 障害の程度問題は、自賠責保険が準用している労災保険の認定基準上、非器質性精神障害の後遺障害が残っているというための要件を以下のように定めており、9級、12級および14級の3段階に区分した等級が定められています。

(1)最低条件

以下に列挙する【○精神症状○】のうち1つ以上の精神症状を残し、かつ、【☆能力に関する判断要素☆】のうち1つ以上の能力について障害が認められること。

(2)自賠責が準拠している労災保険の認定基準=障害の程度についての判断は、具体的には【能力喪失】,【助言・援助の必要性の程度】判断問題であること

 因果関係の要件を満たしていることを前提に、上記(1)の最低条件を満たす場合、認定される後遺障害等級はどの様な等級になるのかが問題となります。

 自賠責保険実務が準拠している労災保険の認定基準は下記の通りです。


【表:非器質性精神障害の後遺障害等級認定基準】

9級、12級、14級の判断の振り分けは、上記【表:非器質性精神障害の後遺障害等級認定基準】に記載してある通り、【能力喪失】【助言・援助の必要性の程度】によって振り分けられています。


 非器質性精神障害事案では、後遺障害の程度についての判断は、【能力喪失】,【助言・援助の必要性の程度】判断問題なのです。

(3)より具体的には、【能力喪失】【助言・援助の必要性の程度】の判断に際して、何を検討要素として、どの様に判断がなされるのか

 より具体的な判断要素としては、障害程度の判断に際しては、以下の要素が検討されています。


【検討要素】

①精神科等の専門医で治療を受けたかどうか、

②治療(投薬)の内容、

③精神科等での治療期間、

④担当医からの照会回答書の回答内容(具体的症状、能力低下の状態等)

 例えば、③精神科等での治療期間が半年にも満たないなど短い期間で終わっていれば後遺障害等級非該当という判断がなされることもあり得ます。

 ④保険会社からの照会に対して、担当医が能力低下の状態につき、本人の生来の性格に起因するなどと記載してしまうと、当該事故による後遺障害は発生していない との判断もなされうるでしょう。


(4)非器質性精神障害の認定に用いられる書式について

① 様式3号、非器質性精神障害の後遺障害の状態に関する意見書 について

 障害程度の判断で、必ず参考にされていると思われる書式があります。

 様式3号、「非器質性精神障害の後遺障害の状態に関する意見書」という書式で、医師がどの様に回答するかは認定される等級をわける大事な要素になります。

 書式の内容としては、上記8つの判断要素(仕事、生活に関心を持つこと、通勤、作業、意思伝達、対人関係、身辺の危機回避行動、予期せぬ困難への対応など)ごとに、「適切又は概ねできる」、「時々助言・援助が必要」、「ひんぱんに助言・援助が必要」「 できない」、の1つに○印を付けてもらうのと、意見書に初診時の所見と既往症の有無、治療経過を記載してもらうという内容になっています。

 この様式3号への記載内容と、具体的な症状や能力低下の状態に関する具体的説明と、実際の入通院状況、治療内容、治療経過とで整合性があるかが検討されて等級認定がなされています。

② 日常生活状況報告書 について

 「今日は何月何日かわかりますか」「他人との話が通じますか」「すぐに泣いたり怒ったり笑ったりしますか」「食事は自分で食べることができますか」「衣類は自分で着ることができますか」「トイレに行けますか」などと言った日常生活状況についての質問に対し、答えを○で囲んでいくとともに仕事、学校での状況を説明する体裁の書式です。この書類の記載内容をもって直ちに認定はなされていないはずですが、医師による上記意見書とあわせて判断の資料とされている書類です。

5 過去の経験事例、おおまかなイメージ

非器質性精神障害事案における等級認定のおおまかなイメージ、過去の経験事例としては、以下の通りです。

9級

 認知・記憶障害、人格変化など明らかに脳の異常に基づく特有の症状を呈しているにも関わらず、脳内の損傷について(現代の科学水準では)画像所見が得られていない場合。

 実況見分調書などの刑事記録から窺える事故状況として、頭部を強く打ち付けていることが明らか。 精神・整形にかかわらず1か月前後の入院をしていることも多い。


※【経験事例】事故後、10年近く引きこもり生活から脱出できなくなっていた人の事案を受任したことがあります。

 9級として大幅に素因減額した金額と12級として素因減額の幅を抑えた金額との中間ぐらいの金額で示談解決しました。

12級

認知・記憶障害、人格変化など明らかに脳の異常に基づく特有の症状を呈しているにも関わらず、脳内の損傷について(現代の科学水準では)画像所見が得られていない場合。

 事故状況として頭部を打ち付けている。入院はしていないことが多い。

 運悪く、初診時に打撲といった診断が付されてしまい適切な治療を受けられなかったような印象を受ける人が多いです。


※【経験事例】画像所見はなかったものの神経心理学検査の一種であるWAIS-R検査(ウェクスラー検査)で言語性IQと動作性IQの解離が大きく、後天的に脳が損傷を受けたことを示す所見がありました。FullIQの値も出現率が低い数値にとどまっていました。

14級

 特に画像所見なし。ただ、症状だけは出ていることが医師の意見書などからは窺える。残念賞、といったイメージです。

6 裁判例の傾向

 非器質性精神障害事案は、自賠責の認定基準は曖昧で、しかも辛い傾向が強く、裁判例でもかなり争われています。

 別途記載します。

7 弁護士への相談に際して

 特に、事故状況について詳しくお知らせ下さい。頭部へ加わった衝撃の程度や負傷部位について詳しく。

 そして通院状況として、どこの病院の何科に何日通われて、どのような診断が付されているのか。特に精神症状はいつから発症しているのか。

 そういった情報があれば、本気で非器質性精神障害で等級認定を狙える事案なのか、ある程度振り分けが出来ます。

 特に、精神科への通院治療費は、最終的な示談交渉をはかろうとするに際して、「払う・払わない」を巡って紛争の種になりがちです。治療が必要かつ相当だったことを医療記録上も残しておいた方が好ましいと思います。


 経験としては、非器質性精神障害のご相談では、本人の精神的ショックの度合いが大きいのに対して、自賠責後遺障害等級認定の基準にまでは達しないということが多いと感じています。

 大まかな方針としては、通院を1か月以上の空白期間を作ることなく、6か月以上続け、頸椎捻挫後の神経症状などで等級認定を得るとともに、非器質性精神障害でも後遺障害等級の認定を狙ったうえ、裁判所基準で賠償を求めるという方針で進めるべき事案が世の中では多いかなと感じます。

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