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Ⅳ-⑤ 醜状損害(外貌の醜状)

  • 1 醜状障害(外貌の醜状)とはどの様なものか
    • (1)醜状障害についての説明
    • (2)注意点、認定基準について
    • (3)外貌の醜状について認定基準の解説
    • (4)注意点
    • (5)上肢・下肢の醜状について
  • 2 争いになりやすい点

1 醜状障害(外貌の醜状)とはどの様なものか

(1)醜状障害についての説明

ア 定義

 外貌の醜状障害とは、交通事故によって、顔面又は上肢・下肢の露出面に目立つほどの傷跡が残ってしまった場合、傷として残った醜状痕を独立の後遺障害の1つとして評価するものです。

 後遺障害等級認定の評価対象となる外貌の醜状とは、他人からみて醜いと思わせる程度のもの、つまり、「人目につく程度以上の大きさ」で、瘢痕、線状痕、組織陥没、色素沈着による黒褐色の変色、色素脱失による白斑などが含まれます。


イ 瘢痕についての補足説明

 瘢痕は、交通事故によって人体の様々な器官の組織が欠損してしまい、これを治癒しようと、肉芽を形成し、皮膚などの器官が修復される過程で発生します。痕が赤や白くなってしまったり、膨らみを持つなど、正常な箇所の皮膚と比べると見分けがつきやすくなってしまします。



(2)注意点、認定基準について

 「人目につくか否か」がポイントの1つなので、
※眉毛、頭髪で隠れる部位に生じた醜状痕については、後遺障害としての外貌醜状とは評価されない点に注意が必要です。


 醜状障害についての認定基準は下記表の通りです。
※外貌の醜状については醜状の程度によって3段階に序列づけされています。
※上肢・下肢の露出面の醜状については外貌醜状とは別異に扱われていて、それぞれ14等級4号、5号として認定基準が設けられています。
顔や首などの醜状の方が上肢・下肢の醜状よりもより人目につきやすいため、取り扱いに区別が設けられているのです。

 ※豆知識:外貌障害については、かつては男女間で区別を設け、女性の補償を男性より分厚くしていました。しかし、とある裁判所で違憲判決が下されたため、この判決を踏まえて行政で議論がなされ、男性の醜状も女性と同様に補償をするという改正がなされました。

 また、7級相当の「醜状」として扱われていた醜状痕であっても、傷跡を相当程度に軽減できるようになってきたという医療技術の進歩を踏まえ、改正により、9級「外貌に相当程度の醜状を残すもの」という中間的な認定基準が新たに設けられました。平成22年6月10日以後の事故には現在の基準が適用されるので、ほとんどの方にとって、改正情報につき理解される必要はないかと思います。


(3)外貌の醜状について認定基準の解説

ア 「外貌」(7級12号、9級16号、12級14号)

 外貌とは=人体のうち、上肢と下肢以外の日常的に露出する部位を意味します。例えば、人目につく頭、顔、頸部などが外貌の範囲に含まれます。

 他方で、上肢や下肢の醜状痕は14級4号、14級5号の対象となるため、7級、9級、12級の認定対象となる「外貌」には含まれません。


イ 外貌の「著しい醜状」(7級12号)

 醜状痕の残った部位・位置ごとに、下記の通り、等級認定の条件とされる醜状痕の大きさが異なっています。例えば顔は人目に付きやすく目立ちやすい部位であるため頭部や頸部よりも等級認定までのハードルが緩やかになっています。

 車両がガソリンで炎上し、火傷を負ってしまった場合などで「著しい醜状」と認定されてしまうような大けがを負うことはあり得ます。

①頭部に:手のひら大以上の瘢痕 又は 頭蓋骨の手のひら大以上の欠損

②顔面部に:鶏卵大面以上の瘢痕 又は 10円銅貨大以上の組織陥没

③頚部に:手のひら大以上の瘢痕

 ①~③の条件に該当する場合で、人目につく程度のもの が「著しい醜状」と評価され、7級12号の認定を受けます。

ウ 外貌の「相当程度の醜状」(9級16号)

顔面部の長さ5㎝以上の線状痕で、人目につく程度のもの

エ 外貌の単なる「醜状」(12級14号)

①頭部に:鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損

②顔面部に:10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3㎝以降の線状痕

③頚部に:鶏卵大面以上の瘢痕

①~③の条件に該当する場合で、人目につく程度のもの が「醜状」と評価され、12級14号の認定を受けます。

(4)注意点

ア 2個以上の瘢痕や線状痕を合算する場合

 2個以上の瘢痕又は線状痕が相隣接し、又はあいまって1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合は、それらの面積、長さ等を合算して等級認定の対象とします。


イ 顔面神経麻痺、閉瞼不能

 顔面神経麻痺は、本来、神経系統の機能障害です。ただし、顔面神経麻痺の結果として現れる口の歪みは、単なる醜状として扱われます。

 また、閉瞼不能は眼瞼の障害として取り扱われます。


(5)上肢・下肢の醜状について

 上肢又は下肢の「露出面」とは、

上肢にあっては、ひじ関節以下(手部を含む)

下肢にあっては、ひざ関節以下(足背部を含む)

2 典型的な争点-醜状障害による労働能力喪失率を何%とみるべきか

(1)問題の所在

 醜状障害については、顔や体に目立つ傷が残ってしまったという障害ですが、傷が残ってしまったことは、労働能力の喪失とは無関係ではないかという問題が生じます。

 つまり、損害保険会社は、「醜状障害は就労に与える影響はない。」として、労働能力喪失率を0%、逸失利益を0円と算定することが多くみられます。

 歯の障害でも同様の問題が起こるのですが、被害者としては、採用や昇進や仕事の円滑な遂行という点で醜状障害は全く影響がないとは感じていないことが多く、損害保険会社と被害者との間で争点となるのです。

(2)裁判所の傾向

ア 裁判所のためらい

 裁判所の傾向としては、醜状障害自体の労働能力喪失率については否定的な傾向がある(=逸失利益を0円と算定する例も多い)のですが、被害者の職業や醜状の部位によって労働能力の喪失を認める判断をしている裁判例もそれなりに有ります。

 例えば、ホステスは、その容貌が非常に重要な意味を持つ職種で、醜状障害が残った状態ではホステスという仕事を続けること困難であるとして労働能力喪失率を認めた裁判例があります。

 ただ、この場合でも、労働能力喪失期間については、かなり制限しています。裁判所としては、同種事案との公平性や判断基準の不明確性を考えると、醜状障害に労働能力喪失を正面から認めることにはためらいがあるのでしょう。

イ 「慰謝料の補充的な性質」を使って被害者を多少救済している手法

 裁判例の中には、醜状障害自体に労働能力の喪失を認めないか、労働能力喪失率や喪失期間を制限している事案であっても、醜状障害による逸失利益を否定する代わりに慰謝料額を増額するなどして調整を図っている裁判例も多くなっています。

 裁判官としては、醜状障害に対して逸失利益を全面的に認める「やや画期的過ぎる判決」を書いて保険会社から控訴されてしまうことを懸念するのでしょう。慰謝料として考慮したという判決であれば、「それほど画期的過ぎる判決にはならない」ため、保険会社からの控訴を防ぎ、紛争を解決するという裁判所の役割を果たすことが出来るのです。

 例えば、顔面醜状のために努力してきたモデルになる夢を諦めざるを得なかった(夢なので得べかりし利益の喪失を正面からは認定し難いが、努力してきたこと自体は認定できる)とか、被害者が20歳代の未婚女性であることなどが慰謝料の増額事由として考慮された事例があります。

 損害保険会社は、慰謝料額を調整することはあっても、微々たる金額の提示にとどまるのが通常です。

 私は、醜状障害や歯の障害については、裁判を起こしたうえ、逸失利益として正面から損害額を認めてもらえないまでも、慰謝料の増額を勝ち取る努力をした方が良いのではないかと考えています。

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